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暗号資産の確定申告と税金はいくらから必要か?

暗号資産(仮想通貨)取引への関心が高まる中、その利益に係る税務上の取り扱い、とくに「いくらから確定申告が必要になるのか」という点は多くの方が抱える疑問です。暗号資産の確定申告が必要となる所得の基準額を中心に、税金課税の仕組み、申告手続き、注意点などを専門家の視点から網羅的に解説します。

目次を表示

暗号資産の確定申告とは

まず、暗号資産取引における税務の基本を理解することが重要です。利益の定義から課税タイミング、所得区分、税率、そして無申告のリスクと節税策まで、順を追って見ていきましょう。

暗号資産(仮想通貨)の利益(所得)とは?課税対象となるタイミングを解説

暗号資産取引によって生じる「利益(所得)」とは、一般的に暗号資産を売却または使用した際の価額(収入金額)から、その暗号資産の取得価額および売却に要した必要経費を差し引いた金額を指します。

課税対象となる主なタイミング

利益が確定し課税対象となるのは、日本円に換金した時だけではありません。以下のタイミングで所得が発生します。

  1. 暗号資産を売却して法定通貨(日本円など)を得たとき:

    もっとも一般的なケースです。売却価格から取得価格と手数料を引いた差額が利益となります。

    • 計算例:30万円で購入した1BTCを50万円で売却した場合、利益は20万円です(手数料等を考慮しない場合)。
  2. 保有する暗号資産で他の暗号資産を購入(交換)したとき:

    この取引は、保有する暗号資産を一度売却し、その対価で別の暗号資産を購入したものとみなされます。交換元の暗号資産について、交換時の時価で利益または損失が確定します。日本円に換金していなくても課税対象となる点に注意が必要です。

    • 計算例:50万円で購入した1BTCを、1BTCの時価が75万円の時点でXRPと交換した場合、BTCに係る利益25万円が認識されます。国税庁の指針によれば、所得金額 = (交換により取得した暗号資産の時価) - (交換した暗号資産の取得価額)となります。
  3. 暗号資産で商品やサービスを購入したとき:

    暗号資産による決済も、保有する暗号資産を一度売却し、その対価で商品やサービスを購入したものとみなされます。決済時の暗号資産の時価が取得価額を上回っていれば、その差額が利益となります。

    • 計算例:8万円で取得した0.1BTCを使い、13万円相当のパソコンを購入した場合、BTCに係る利益5万円が認識されます。国税庁の指針では、所得金額 = (商品の価額) - (支払った暗号資産の取得価額)です。
  4. マイニングによって暗号資産を取得したとき:

    マイニングにより取得した暗号資産は、取得時点の時価が収入金額となり、マイニングに要した電気代や設備費などを必要経費として差し引いた額が所得となります。

  5. ステーキングやレンディングによって報酬として暗号資産を取得したとき:

    ステーキング報酬やレンディングによる利子として暗号資産を受け取った場合、その取得時点の時価が所得となります。

  6. エアドロップやハードフォークにより新たな暗号資産を取得したとき:

    無償で配布されるエアドロップや、ハードフォークによって新たな暗号資産を取得し、それに市場価値がある場合、原則として取得時点の時価が所得となります。ただし、国税庁のFAQによれば、ハードフォーク(分岐)に伴い取得した新たな暗号資産の取得価額は0円であり、その取得自体では所得は生じないものと考えられています(経済的価値のあるものとして付与された場合を除く)。この点は状況により判断が異なる可能性があるため注意が必要です。

課税対象とならないケース:単なる保有(ガチホ)

暗号資産を購入後、売却や交換などをせず単に保有し続けているだけ(いわゆる「ガチホ」)の場合、その暗号資産の価値が購入時より上昇して含み益が生じていても、その含み益は課税対象とはなりません。課税されるのは、あくまで利益が「実現」したタイミングです。

ただし、法人が暗号資産を保有する場合は期末評価課税の対象となることがありましたが、近年の税制改正で一部緩和(自社発行トークンの含み益は課税対象外)されています。当記事は個人を対象としていますが、この点は法人と個人の大きな違いです。

これらの多様な課税タイミングを正確に把握し、各取引の取得価額を管理することは、とくに活発に取引を行う個人にとって大きな負担となり得ます。たとえば、頻繁に同一銘柄を異なる価格で購入し、一部を売却・交換する場合、どの購入分の暗号資産が売却・交換されたのかを特定し、その取得価額を正確に計算する必要があります。これは移動平均法や総平均法といった計算方法を用いることになりますが、手作業では誤りが生じやすく、時間もかかります。この複雑性が、後述する損益計算ツールの利用を推奨する大きな理由の1つです。

また、「日本円に換金していなければ税金はかからない」という誤解も散見されますが、上記のように暗号資産同士の交換や暗号資産による商品購入でも利益は確定し課税対象となります。暗号資産エコシステム内で完結する取引であっても、税務上の利益認識は行われることを理解しておく必要があります。

暗号資産の所得は「雑所得」!給与など他の所得と合算して税額が決まる

個人が暗号資産取引によって得た利益は、原則として所得税法上の「雑所得」に分類されます。

雑所得は「総合課税」の対象となり、給与所得や事業所得(該当する場合)など、他の所得と合算した総所得金額に対して所得税が課税されます。

例外:事業所得となるケース

ごく稀なケースですが、暗号資産取引が事業として行われていると客観的に認められる場合(例:その取引で生計を立てている、組織的・継続的に取引を行っているなど)には、「事業所得」として扱われる可能性もあります。国税庁のFAQによれば、暗号資産取引に係る収入金額が年間300万円を超え、かつ帳簿書類の保存がある場合は原則として事業所得、帳簿書類の保存がない場合は雑所得(業務に係るもの)とされています。

総合課税の仕組み上、暗号資産で大きな利益を得ると、その利益が給与などの他の所得に上乗せされるため、より高い所得税率が適用される可能性があります。日本の所得税は超過累進課税制度を採用しており、所得が多くなるほど税率も段階的に上昇します(5%から45%)。たとえば、給与所得ですでに20%の税率区分にいる方が暗号資産で利益を得た場合、その利益部分には20%以上の税率が適用されることになり、結果として暗号資産利益に対する実効税率が予想以上に高くなることがあります。これはとくに高所得者にとって重要な検討事項です。

また、雑所得の大きな特徴として、損失の取り扱いが挙げられます。暗号資産取引で生じた損失は、原則として給与所得や事業所得など他の所得区分の所得と損益通算(相殺)することができません。これは、たとえば株式投資(上場株式等の譲渡所得)の損失とは異なる扱いです。

ただし、同じ「雑所得」の区分内であれば、他の雑所得の利益と暗号資産の損失を通算する「内部通算」は可能です。たとえば、暗号資産取引の損失を、副業(雑所得に該当する場合)の利益と相殺するといったケースが考えられます。具体的には、海外FX取引(総合課税の雑所得となる場合)の利益と暗号資産の損失を通算できる場合がありますが、国内FX取引(申告分離課税の雑所得)や株式取引の譲渡損失(譲渡所得)とは通算できません。この所得区分の違いを理解することが肝要です。

意外と知らない?所得税と住民税の仕組みと税率

暗号資産の利益には、国税である「所得税」と、地方税である「住民税」の双方が課税されます。

所得税

所得税の速算表(令和5年分以降)

個人の総所得金額(暗号資産の利益を含む)から各種所得控除を差し引いた後の課税所得金額に応じて、以下の税率と控除額を用いて所得税額を計算します。この表は、暗号資産の利益が他の所得と合算された結果、どの税率区分に該当し得るかを把握する上で非常に重要です。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円を超えるもの45%4,796,000円

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

住民税

暗号資産の利益に対する実質的な税負担は、所得税(最高45% + 復興特別所得税)と住民税(10%)を合わせると、高額所得者の場合、最大で約55%にも達する可能性があります。これは、暗号資産の利益が総合課税の対象である雑所得として扱われ、他の所得と合算された上で累進税率が適用されるためです。とくに、給与所得などである程度の収入がある方が暗号資産で大きな利益を得た場合、その利益部分に高い限界税率が適用されるため、税負担が予想以上に重くなることがあります。この点を事前に理解しておくことは、資金計画上非常に重要です。

また、後述しますが、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になるケースがあるという点は、とくに注意が必要です。この制度の違いが、多くの納税者にとって混乱の元となり、意図しない申告漏れを引き起こす一因となっています。

「バレない」はあり得ない!税務署に無申告が発覚する理由と重いペナルティ

「少額だからバレないだろう」「海外の取引所だから大丈夫」といった考えは非常に危険です。税務当局は暗号資産取引に関する情報を把握する手段を強化しています。

税務署に無申告が発覚する主な理由

  1. 国内交換業者からの情報提供(支払調書): 日本国内の暗号資産交換業者は、顧客の年間取引報告書(支払調書)を税務署に提出する義務があります。国税庁もこれらの報告を要求しています。これにより、税務署は個人の取引状況を把握できます。
  2. 国際的な情報交換: 日本は多くの国と租税条約を締結しており、これに基づいて海外の税務当局と情報を交換しています。海外の取引所を利用した取引であっても、情報が日本の税務署に伝わる可能性があります。
  3. 銀行口座の取引履歴調査: 税務署は銀行口座の入出金履歴を調査する権限を持っています。暗号資産交換業者との間で多額の資金移動があるにもかかわらず、それに見合う申告がない場合、疑念を抱かれる可能性があります。
  4. 取引相手方への税務調査からの波及: 個人間取引(P2P取引)などであっても、取引相手に税務調査が入った場合、反面調査として自身の取引が発覚することがあります。
  5. データ分析・内部告発など: 税務当局はデータ分析技術を高度化させており、不審な取引パターンを検出する能力が向上しています。また、第三者からの情報提供(いわゆるタレコミ)も発覚の一因となり得ます。

分散型取引所(DEX)やプライベートウォレットの利用は、税務当局にとって取引の追跡を困難にする側面がありますが、当局もこれらの新しい技術に対応するための調査手法を進化させています。とくに法定通貨との接点を持つ取引や高額な取引は、何らかの形で記録が残る可能性が高いと言えます。初期の暗号資産取引にあった匿名性の神話は、規制の整備や国際協力の進展とともに薄れつつあり、「バレない」という前提で行動することは極めてリスクが高いと言わざるを得ません。

無申告・過少申告に対するペナルティ(追徴課税)

確定申告を怠ったり、所得を意図的に少なく申告したりした場合、本来納めるべき税金(本税)に加えて、以下のような重いペナルティが課されます。

ペナルティの種類内容主な税率
無申告加算税期限内に確定申告をしなかった場合に課される。原則として、納付すべき税額に対し50万円までは15%、50万円を超える部分は20%。税務調査の事前通知後に自主的に申告した場合は、50万円までは10%、50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分は25%(令和5年分以降)。調査前に自主的に申告すれば5%に軽減される場合もある。
過少申告加算税期限内に申告したが、申告額が実際より少なかった場合に課される。新たに納めることになった税金の10%。ただし、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超過する部分は15%。税務調査の通知前に自主的に修正申告すれば課されない。
重加算税意図的な隠蔽や仮装など、悪質な不正行為があったと判断された場合に、無申告加算税・過少申告加算税に代えて課される。過少申告の場合:追加本税の35%。無申告の場合:納付すべき税額の40%。
延滞税納期限までに税金を納付しなかった場合に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される利息に相当するもの。税率(年率)は、納期限の翌日から2月を経過する日までは原則年7.3%と特例基準割合+1%のいずれか低い割合、それ以降は原則年14.6%と特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合。具体的な税率は毎年変動する。

参考:No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁

これらのペナルティは、本来の納税額に上乗せされるため、合計支払額が当初の税額を大幅に上回ることがあります。とくに重加算税が課されるような悪質なケースでは、経済的な負担は計り知れません。たとえば、100万円の本税が無申告で、それが悪質と判断された場合、重加算税40万円に加え、長期間の延滞税が発生し、総支払額が150万円を超えることも十分にあり得ます。実際に、数千万円から1億円を超える暗号資産所得の無申告が指摘され、本税に加えて数千万円単位の追徴課税が課された事例も報道されています。

国税庁の発表によれば、令和4事務年度(2022年)において暗号資産等に関する税務調査は615件実施され、そのうち約89%にあたる548件で申告漏れ等の非違が指摘されています。これは、税務当局が暗号資産関連の税務コンプライアンスを重視しており、調査においても高い確率で問題を発見していることを示唆しています。このような状況を踏まえれば、適正な申告と納税がもっとも賢明な選択であることは明らかです。

税金の「抜け道」はない!ただし正当な節税は可能

税法には、いわゆる「抜け道」のようなものは存在しません。脱税を指南するような情報には決して耳を貸さず、合法的な範囲での節税を心掛けるべきです。

正当な節税方法

  1. 必要経費の正確な計上: これがもっとも基本的な節税策です。

    • 直接経費: 暗号資産の取得価額、取引手数料、送金手数料など、取引に直接関連する費用は必要経費として収入金額から控除できます。
    • 間接経費(家事按分など):
      • 通信費・光熱費: 自宅で取引を行っている場合、取引に使用した割合に応じて、インターネット料金や電気代の一部を経費として計上できる場合があります。ただし、合理的な基準で按分計算する必要があります。
      • パソコン等の購入費: 主に暗号資産取引のために使用するパソコンやスマートフォンなどの購入費用は、経費として計上できる可能性があります。ただし、10万円以上のものは原則として減価償却(数年に分けて経費化)の対象となります。たとえば、サーバー用以外のパソコンの法定耐用年数は4年とされています。
      • 書籍代・セミナー参加費: 暗号資産取引の知識習得やスキルアップのために購入した書籍や参加したセミナーの費用も、取引に直接関連すると認められれば経費にできます。
    • 家事按分の考え方: 私的利用と事業的利用が混在する費用(家賃、通信費、光熱費など)については、使用時間や使用面積など、客観的で合理的な基準に基づいて事業的利用分を算出し、経費計上します。税務調査の際にその算出根拠を明確に説明できることが重要です。安易な見積もりや過大な計上は否認されるリスクがあります。
  2. 所得計算方法の選択(届出が必要な場合あり): 個人が暗号資産の所得を計算する際、原則として「総平均法」または「移動平均法」のいずれかを選択します。一度選択した評価方法は、原則として継続して適用する必要があります。移動平均法を選択する場合には、事前に税務署長へ「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。どちらの計算方法を選択するかによって、年間の損益額が変わることがあるため、自身の取引スタイルに合わせて検討することが考えられますが、これは税法で認められた計算方法の選択であり、「抜け道」ではありません。

  3. 雑所得内での損益通算: 前述の通り、暗号資産取引で損失が出た場合、同じ年の他の雑所得(総合課税の対象となるもの)の利益と相殺できます。

  4. 各種所得控除の活用: 基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除など、すべての納税者に適用される所得控除を漏れなく活用することで、課税所得金額を減らし、結果として税負担を軽減できます。

必要経費を計上する際は、その支出が暗号資産取引による所得を得るために必要であったことを客観的に証明できる書類(領収書、請求書、クレジットカード明細など)を必ず保管しておく必要があります。とくに家事按分を行う場合は、按分計算の根拠となる記録(作業時間ログなど)も重要です。これらの記録がなければ、税務調査で経費として認められない可能性があります。

損失が出た場合はどうする?知っておきたい損益通算のルール

暗号資産取引で損失が生じた場合の税務上の取り扱いは、利益が出た場合と同様に重要です。

この税務上の取り扱いは、投資戦略にも影響を与えます。損失を他の主要な所得と相殺できず、かつ繰り越すこともできないため、暗号資産投資におけるリスク管理や利益確定・損失確定のタイミングは、他の投資対象(たとえば株式)とは異なる観点からの検討が必要となります。とくに、他の雑所得がない個人投資家にとっては、暗号資産取引で発生した損失は、その年の税負担軽減には直接つながらないことになります。この点は、株式投資など、より税制上有利な損失処理が可能な他のアセットクラスとの比較において、暗号資産投資の不利な側面と言えるかもしれません。

暗号資産の確定申告が必要か不要か、ケース別に徹底解説

確定申告が必要となる所得の基準額は、個人の状況によって異なります。ここでは主なケース別に解説します。

【サラリーマン・給与所得者】利益が年間20万円を超える場合

年末調整を受けている給与所得者(サラリーマンなど)が、給与所得以外の所得(暗号資産の利益を含む雑所得など)の合計額が年間20万円を超える場合には、原則として確定申告が必要です。

暗号資産の利益は雑所得として申告し、給与所得と合算されて所得税が計算されます。これにより、所得税額が増加し、翌年度の住民税額も影響を受けることになります。

【サラリーマン・給与所得者】利益が年間20万円以下の場合【要注意】

給与所得者の場合、暗号資産の利益を含む給与所得以外の所得の合計額が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則として不要です。これは、医療費控除やふるさと納税などで確定申告を行う必要がない場合に限ります。もし他の理由で確定申告をする場合は、20万円以下の暗号資産所得も合わせて申告する必要があります。

【最重要注意点】住民税の申告

所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になることがあります。所得税法上の「20万円以下の所得は申告不要」というルールは、住民税にはそのまま適用されません。

つまり、暗号資産で利益(たとえば5万円)を得て、他に確定申告をする理由がない給与所得者は、所得税の申告は不要ですが、その5万円の利益について市区町村役場へ住民税の申告をする義務が生じます。これを怠ると、後日、市区町村から納税通知および延滞金が請求される可能性があります。

この「隠れた住民税の申告義務」は、多くの給与所得者にとって見落としがちなポイントです。所得税のルールが広く知られているのに対し、住民税の取り扱いについては情報が行き届いていないことが多く、意図せず申告漏れを犯してしまうケースが後を絶ちません。雇用主が税務手続きを代行してくれることに慣れている給与所得者にとって、自ら市区町村役場に申告するという行為は馴染みが薄いかもしれません。しかし、この点を軽視すると、将来的に予期せぬ納税要求やペナルティに直面するリスクがあります。

なお、所得税の確定申告を行った場合は、その情報が税務署から市区町村に連携されるため、別途住民税の申告を行う必要は通常ありません。問題となるのは、所得税の確定申告を「行わない」場合です。

住民税の申告が必要な場合は、お住まいの市区町村役場から住民税申告書を入手し、所得額などを記入して期限内(通常3月15日)に提出します。

【主婦・主夫・学生など扶養に入っている方】利益が年間48万円を超える場合

配偶者や親などの税法上の扶養に入っている方が暗号資産で利益を得た場合、その金額によっては扶養者の税負担や自身の納税義務に影響が出ます。

税法上の扶養親族であるためには、その年の合計所得金額が原則として48万円以下である必要があります(この48万円は基礎控除額に相当します)。

注:税制改正により、この基準額は将来変更される可能性があります。たとえば、令和7年(2025年)分の所得からは、扶養親族の合計所得金額の要件が58万円に引き上げられるとの情報もあります。当記事では、現行制度で広く認識されている48万円を基準として解説しますが、最新の情報をご確認ください。

合計所得金額が48万円を超えた場合の主な影響

  1. 扶養から外れる可能性: 合計所得金額が48万円を超えると、税法上の扶養親族の要件を満たさなくなるため、扶養から外れます。
  2. 扶養者の税負担増: 扶養者が受けていた配偶者控除や扶養控除が適用できなくなるため、扶養者の所得税および住民税が増加します。
  3. 自身の納税義務発生: 扶養に入っていた方自身も、合計所得金額が基礎控除額(48万円)などを超えれば、所得税の確定申告と納税が必要になります。

扶養者が支払う税金の増加額シミュレーション(扶養親族の所得が48万円を超えた場合)

扶養親族(例:16歳以上の子供)が所得要件を超過し扶養から外れた場合、扶養者(例:親)の税負担は以下のように増加する可能性があります。これはあくまで目安であり、扶養者の所得水準や家族構成、各種控除の適用状況によって変動します。

扶養者の年収(目安)子供の年齢所得税増加額(年額・約)住民税増加額(年額・約)合計税負担増加額(年額・約)
300万円~400万円16歳~18歳38,000円33,000円71,000円
500万円~600万円16歳~18歳38,000円33,000円71,000円
700万円~850万円16歳~18歳76,000円33,000円109,000円
300万円~400万円19歳~22歳※63,000円45,000円108,000円
500万円~600万円19歳~22歳※63,000円45,000円108,000円
700万円~850万円19歳~22歳※126,000円45,000円171,000円

※19歳~22歳の特定扶養親族の場合、控除額が大きいため影響も大きくなります。上記の金額は、扶養控除が完全に適用されなくなった場合の最大影響額に近いものです。実際の税額は個別の状況により異なります。

社会保険の扶養

税法上の扶養とは別に、健康保険や年金の「社会保険の扶養」があります。こちらは通常、年間収入130万円未満(状況により異なる)が基準となります。この基準を超えると、自身で国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を支払う必要が生じます。

扶養に入っている方が暗号資産で利益を得る場合、税法上の扶養の所得基準(例:48万円)と社会保険上の扶養の収入基準(例:130万円)の双方に注意が必要です。これらの基準を超過すると、扶養者の税負担増、自身の納税義務発生、さらには自身の社会保険料負担発生という「三重苦」に直面する可能性があります。とくに学生など、これらの制度に詳しくない方が無自覚に基準を超えてしまうと、家族全体の家計に予期せぬ大きな影響を与えるため、家族内での情報共有と慎重な所得管理が求められます。

【個人事業主・フリーランス】利益が出た場合

個人事業主やフリーランスとしてすでに確定申告を行っている方は、暗号資産取引で利益が出た場合、その金額の多寡にかかわらず、事業所得などと合わせて申告する必要があります。給与所得者に適用される「20万円以下なら申告不要」というルールは適用されません。

所得区分

通常、暗号資産の利益は「雑所得」として、主たる事業の「事業所得」とは別に申告します。ただし、暗号資産取引自体が事業として行われていると認められる場合は「事業所得」となります(前述の基準参照)。

事業所得の損失と暗号資産利益の相殺

興味深い点として、個人事業主の主たる事業所得が赤字(マイナス)になった場合、その事業所得の損失を、暗号資産取引で生じた利益(雑所得)と損益通算することができるとされています。これは、事業所得の損失が他の所得(総合課税の対象となるもの)から控除できるという税法の一般原則に基づくものです。

個人事業主やフリーランスの方は、たとえ少額であっても暗号資産の利益を漏れなく申告する義務があることを認識しておく必要があります。すでに確定申告の義務があるため、暗号資産の利益が1円でもあれば、それを計算し、申告書に含めなければなりません。これは、給与所得者が(所得税に関して)少額の副業所得を申告しなくてもよい場合があるのとは対照的です。暗号資産の損益計算(総平均法など)と事業所得の計算(発生主義会計など)を組み合わせることは、確定申告書の作成をより複雑にする可能性があるため、専門家のアドバイスや適切な会計ソフトの利用が一層重要になります。

暗号資産をただ保有(ガチホ)しているだけの場合

前述の通り、個人が暗号資産を購入後、売却や交換などをせずに単に保有し続けているだけであれば、含み益が生じていても課税対象とはなりません。

ただし、「保有しているだけ」と思っていても、以下のような活動から所得が発生し、課税対象となる場合があります。

自身を「ガチホ勢」と認識している方でも、取引所のサービスなどを利用してステーキングに参加したり、DeFiプロトコルに関与したりすることで、意図せず課税所得を生み出している可能性があります。これらの活動から得られる報酬は、その都度所得として認識されるため、注意が必要です。

そもそも確定申告が不要なケースとは?

暗号資産取引に関与していても、所得税の確定申告が不要となる主なケースは以下の通りです。

  1. 給与所得者で、給与所得以外の所得(暗号資産の利益を含む)の合計額が年間20万円以下の場合:

    ただし、医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の所得も申告が必要です。また、住民税の申告は別途必要になる可能性がある点に重ねて注意が必要です。

  2. 暗号資産の利益以外に所得がなく、その暗号資産の利益(所得)の合計額が年間48万円(基礎控除額)以下の場合:

    他に収入源がなく、暗号資産の所得から各種所得控除(最低でも基礎控除48万円)を差し引いた結果、課税所得が0円以下になる場合は、所得税の納税義務が生じないため、確定申告も不要となります。

  3. 暗号資産取引で年間を通じて損失のみが発生し、他に相殺すべき雑所得がない場合:

    利益がなければ申告すべき所得もありません。ただし、取引記録は将来のために保管しておくことが賢明です。

相続・贈与により暗号資産を取得した場合

暗号資産を相続や贈与によって取得した場合、取得時点では原則として所得税の課税対象とはなりません。ただし、取得した暗号資産の価額によっては、相続税や贈与税の申告が必要になる場合があります。その後、相続・贈与で得た暗号資産を売却して利益が出た場合は、所得税の課税対象となります。その際の取得価額は、相続・贈与時の時価や被相続人・贈与者の取得価額が引き継がれるなど、状況によって異なります。

所得税の課税対象とはなりませんが、相続税または贈与税の課税対象となります。参考:仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)

サラリーマンでも簡単!暗号資産の確定申告のやり方

暗号資産の確定申告は複雑に感じられるかもしれませんが、手順を理解し、適切なツールを活用すれば、サラリーマンの方でも行うことが可能です。

STEP1:年間の損益計算を行う(計算ツールの活用がオススメ)

まず、1月1日から12月31日までの1年間のすべての暗号資産取引について、損益を計算します。

主な所得計算方法

計算ツールの利用推奨

多数の取引、異なる暗号資産間の交換、手数料計算など、手作業での損益計算は誤りが生じやすく、膨大な時間を要します。そのため、専用の損益計算ツールの利用が強く推奨されます。これらのツールは、取引所からの取引履歴データ(API連携やCSVファイル)を取り込み、選択した計算方法に基づいて自動で損益を算出し、確定申告に必要な形式のレポートを生成してくれます。

国税庁提供の計算書

国税庁もウェブサイトで「暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)」というExcel形式の計算シートを提供しています。これを利用することも可能ですが、取引データの入力は手作業が基本となります。

損益計算ツールは非常に便利ですが、その計算結果の正確性は入力される取引データの完全性と正確性に依存します。すべての取引所、ウォレットからの取引履歴を漏れなく、かつ正しくツールに取り込むことが大前提です。一部の取引を見落としたり、CSVファイルの形式が不適切だったりすると、計算結果も不正確なものになってしまいます。ツールはあくまで計算を補助するものであり、データ収集と検証の責任は納税者自身にあることを忘れてはなりません。

参考:暗号資産等に関する税務上の取扱いおよび計算書について(令和6年12月)|国税庁

STEP2:必要書類を準備する(年間取引報告書など)

確定申告には以下の書類などが必要となります。

STEP3:確定申告書を作成し、提出する(e-Taxが便利)

準備した書類を基に、確定申告書を作成し、税務署に提出します。

確定申告書の作成・提出方法

暗号資産の利益(雑所得)は、確定申告書の所定の欄(例:第一表の所得金額の「雑 その他」欄など)に記入します。

申告・納税期限

原則として、前年1年間の所得に対する確定申告と所得税の納税は、翌年の2月16日から3月15日までに行う必要があります。

暗号資産の確定申告に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、暗号資産の確定申告に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめます。

Q. ビットコインで100万円稼いだら税金はいくらですか?

一概には言えません。税額は、暗号資産の利益だけでなく、給与所得など他の所得との合計額、各種所得控除(基礎控除、社会保険料控除、扶養控除など)の額によって大きく変動するからです。

あくまで概算であり、個別の状況によって税額は異なります。

Q. 仮想通貨で50万円儲けたら税金はいくらですか?

これも上記と同様に、個別の状況によります。

正確な税額は、自身のすべての所得と控除を考慮して計算する必要があります。

Q. 利益20万円以下なら住民税の申告をしなくてもバレませんか?

「バレない」という保証はどこにもありません。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告義務があることを軽視すべきではありません。

市区町村は、税務署からの確定申告データや、給与支払報告書(勤務先から提出される)などの情報を基に住民税を課税しています。これらの情報と照合し、申告漏れが疑われる場合には問い合わせや調査が行われる可能性があります。

発覚した場合、本来納めるべき住民税に加えて、延滞金が課されることになります。20万円以下の利益に対する住民税額は比較的小額(最大でも約2万円+均等割)であるため、申告を怠るリスクと手間を天秤にかければ、正直に申告する方が賢明です。

Q. 税務署はいくらから動くのですか?

税務署が税務調査を開始する所得金額について、明確な基準は公表されていません。税務署は、申告漏れの金額の多寡だけでなく、情報の入手状況、事案の悪質性、調査の効率性などを総合的に勘案して調査対象を選定すると考えられています。

「20万円ルール」はあくまで給与所得者の所得税の申告義務の有無に関するものであり、税務署の調査対象となるか否かの基準ではありません。少額であっても、悪質な隠蔽や継続的な無申告が疑われる場合は調査対象となる可能性があります。重要なのは金額の大小ではなく、納税義務を正しく理解し、誠実に履行することです。

Q. 便利な損益計算ツールはありますか?

はい、暗号資産の複雑な損益計算をサポートする便利なツールが複数存在します。これらのツールは、取引履歴の自動取り込み、複数計算方法への対応、確定申告用レポートの出力などの機能を備えています。

主な損益計算ツールと特徴

ツール名無料プランの主な特徴・制限有料プランの価格帯・主な特徴
Cryptact国内外取引所自動対応、DeFi自動識別・計算。年間取引件数十万件まで(損益計算は50件まで)。年額6,000円~(取引件数に応じたプラン)。専門スタッフによるメールサポート。DeFiに強く、ポートフォリオ機能も充実。
Gtax対応取引所に制限あり(主に国内取引所・ウォレット)、DeFi非対応。年間取引件数百件まで。年額5,000円~。年額15,000円のライトプランから海外取引所・DeFi対応。セキュリティレベルが高い。NFTなど幅広い取引形態をカバー。
CryptoLinC取引データDL機能、収支計算報告書作成、手入力明細追加、海外取引所利用不可。年間取引件数百件まで。年額3,600円~(個人事業主向け)。日本の確定申告に即した仕様。ICO投資やマイニングにも対応。総平均法・移動平均法選択可能。
Koinly税務レポートの主要機能に制限。取引件数万件まで、ウォレット・取引アカウントは無制限。年額49ドル~。海外取引所やブロックチェーンの対応数が豊富。グローバルな利用に適している。無料プランでも取引履歴取得は無制限。

これらのツールの他に、国税庁が提供するExcelの計算書を利用する方法もありますが、手入力が基本となります。自身の取引量、利用取引所の種類、DeFi取引の有無、予算などを考慮して、最適なツールを選択することが重要です。

暗号資産の確定申告いくらからを総括

暗号資産の確定申告が必要となる所得の基準額は、個人の状況によって異なります。主なポイントを再確認しましょう。

重要なのは、これらの基準額が「収入」ではなく「所得(利益)」であるという点です。つまり、収入から取得価額や必要経費を差し引いた後の金額で判断します。

税法の大原則として、特定の免税規定がない限り、すべての所得は課税対象となります。上記の基準額は、主に「確定申告を行う義務が生じるかどうか」のラインであり、所得そのものが非課税になるという意味ではありません。

個々の状況によって税務上の取り扱いは複雑に変わり得るため、一律の回答が難しい場合も少なくありません。ご自身の状況を正確に把握し、申告義務の有無や計算方法に少しでも疑問や不安がある場合は、暗号資産に詳しい税理士などの専門家に相談するか、国税庁のウェブサイトや税務署の窓口で情報を確認することを強く推奨します。

最終的に、税務に関する問題を未然に防ぎ、将来的な不安を解消するためには、制度を正しく理解し、誠実にコンプライアンスを遵守する姿勢がもっとも重要かつ経済的にも合理的な選択と言えるでしょう。

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